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長野地方裁判所松本支部 昭和30年(ヨ)55号 決定

申請人 高山正義 外六名

被申請人 株式会社信州日日新聞

主文

申請人等より被申請人に対し後に当庁に提起する解雇無効確認等事件の本案判決確定に至る迄

一、被申請人は申請人等が松本市下横田町一、四〇三番地被申請人の工場内に立入り勤務することを妨げてはならない。

二、被申請人会社代表者中村源一が昭和三十年十一月三日附で招集した昭和三十年十一月十五日午後一時松本市下横田町一四〇三まつもと新聞社楼上に於ける被申請人会社の臨時株主総会に於いて商号の変更または会社解散の決議をしてはならない。

(注、無保証)

(裁判官 林三郎 樋口和博 神崎敬直)

【参考資料一】

仮処分申請書

申請人 高山正義 外六名

被申請人 株式会社信州日日新聞

申請の趣旨

一、被申請人は申請人等が松本市下横田町一四〇三番地被申請人の工場内に立入り従前通り勤務することを妨げてはならない。

二、被申請人は工場の閉鎖、休業、組織、機構及び名称の変更、合併解散、会社の資産、権利を他に譲渡し転用し処分する一切の行為をしてはならない。

三、被申請人会社代表者中村源一が昭和三十年十一月三日附で招集した昭和三十年十一月十五日午後一時松本市下横田町一四〇三まつもと新聞社楼上に於て被申請人会社の臨時株主総会の招集は之を停止する。

申請の原因

一、申請人等は被申請人会社の従業員として、同会社の発行する「信州日々新聞」「週刊まつもと」「美篶タイムス」(疏第一号証、信州日々新聞、疏第二号証まつもと新聞、疏第三号証美篶タイムス)及び所謂外註(公民館報、機関紙等)の業務に従事し、昭和三十年九月十八日労働組合を結成したところ、被申請人は労働組合法第七条第一号に違反し、十月十八日申請人等に対し、解雇の意思表示をした。そこで申請人等は、十月二十九日貴庁に対し地位保全等仮処分申請をなし、十一月一日附を以つて地位保全並に賃金支払の仮処分決定があつた、(昭和三十年(ヨ)第五一号)(疏第四号)

二、そこで申請人等は十一月二日より被申請人会社に出勤し、従前通り新聞発行及びその他の印刷業務に従事せんとした、(疏第五号証)ところ、被申請人は同会社入口全部を閉鎖し入口には「許可なく無断立入りをお断り致す」との貼紙をし申請人等が仕事に従事せんとするや、之を妨害し、前記仮処分の趣旨に違反した行動をとつている(疏第六号証の一、二)

三、又十一月三日附信州日々新聞(疏第七号証)紙上の各位におわびすると題する中で「ところが十月十八日以来二日まで御存知の如くタプロイド型で印刷発行に尽力してきた私共両名は遂に精神的体力的に力尽き本日引責辞転することになりました。」と被申請人は言い一方では十一月五日附「週刊まつもと」(疏第八号証)の社告に「週刊まつもと」「湖北日報」「安曇日報」の三社名儀で印刷工六名記者二名を募集する記事を掲載し、同じく十一月六日附「週刊まつもと」(疏第七号証)紙上に印刷工二名記者一名を募集するとの記事を二回に渡つてのせる等、一方十一月五日附「週間まつもと」(第八号証)紙上一面の閑文字欄に「聞くところによれば中村氏は中小企業のためにも死ぬまで頑張るのだと力説しているが職場を離れた七名はニクくもない。ただ背後におどるものに対する義憤にほかならないという、これについて某弁護人を要せずして行き届いた手続きの出来るはずもあるまい、妙なくみあわせといえば言える。また活動方法面においても同様なことが言えるようだ」と言い同じく十一月六日付「週刊まつもと」(疏第九号証)閑文字欄中程より、「前に妙なくみあわせというのは何を指すか、聞くところによると労働組合の育成、教育指導の任に当るという松本労政事務所、今回の仮処分通告に関する地裁松本支部の二つの組み合わせである絶対に否定されても多少でも疑問に思われるフシがあるとすれば一体どうするのかと考えさせられる。そればかりでなく、現在のところ某方面より入手した情報によれば動かし得ない事実としての証拠に該当するものがある、(中略)介在人物があり、更にその人物が重要な地位にあるものとするならば由々しきことになるのは火をみるよりも明らかであろう」等と書き立て申請人等を閉め出さうとしている。

四、被申請人は前記仮処分の給料支払義務を不当に回避せんとして今迄株式会社信州日々新聞社に於て発行していた「週刊まつもと」を独立した他社の新聞の様に見せかけ、(疏第八号証)「週間まつもと」の社告及び社説)(疏第二号証「まつもと新聞」の社告)又「みすずタイムス」を名前を変えて湖北日報とし新に安曇日報を発行する等、将来工場を閉鎖し、休業し、又解散、合併、其の他会社の財産の譲渡其の他の処分をなし、事実上信州日日新聞を廃刊し、会社財産を処分陰匿せんとしている、(疏第八、九号証社告)

五、殊に被申請人は十一月三日附を以つて臨時株主総会を招集し、信州日々新聞を廃刊し名儀上株式会社信州日々新聞を解散することを決議しているので若し是等のことが実現するとすれば申請人は被申請人に対し給料を請求することも出来なくなるうれえがある。

昭和三十年十一月九日

申請人 高山正義 外六名

長野地方裁判所松本支部 御中

(別紙省略)

【参考資料二】

仮処分申請事件

(長野地方松本支部昭和三〇年(ヨ)第五一号昭和三〇年一一月一日決定)

申請人 高山正義 外六名

被申請人 株式会社信州日日新聞

主文

申請人等より被申請人に対し後に当庁に提起する解雇無効確認事件の判決確定に至る迄

一、申請人等が被申請人会社の従業員である地位を仮に定める。

二、被申請人は申請人等に対しそれぞれ昭和三十年十月十九日より毎月末日限り別紙目録記載の賃金から税法所定の税金を控除した額を支払え。

(注、無保証)

(裁判官 林三郎 樋口和博 神崎敬直)

(別紙省略)

【参考資料三】

地位保全仮処分申請書

申請人 高山正義 外六名

被申請人 株式会社信州日日新聞

申請の主旨

被申請人が

申請人高山正義、加科義人、臼田義郎、二木政雄、福田勲、羽田房江、三沢ちづ江に対して昭和三十年十月十八日なした解雇の意思表示は何れも仮に之を停止する。

右期間中被申請人は被申請人等に対し別紙目録記載の金額を支払えとの裁判を求める。

申請の理由

一 被申請人会社は、肩書住所地に於ける地に本社する新聞印刷物の発行を目的とする株式会社である。

申請人は何れも被申請人会社の本社(本社従業員合計十八名)に勤務する従業員で入社年月日職種其の他は別表の通りである。

二 申請人は被申請人より、申請の主旨記載の同時日にそれぞれ解雇の意思表示を受け会社の出入を拒否されている。然しながら右の解雇はいづれも左記の理由により、労働組合法第七条、第一号の不当労働行為に該当するものである。

三 組合結成に至る経過

イ 被申請人会社は被申請人会社の従業員に対し、年少者の従業員に対し、夜業や休日出勤を強要し、健康診断を怠るなど数多の苛酷な労働条件の下に待遇し、被申請人会社の従業員は過去に於て幾度か労働組合の結成の必要性を感じながらも被申請人の圧力により、果す事が出来なかつた。

ロ 肩書の各申請人及び被申請人会社の従業員中村正明ら合計八名は昭和三十年九月十八日前項の悪労働条件の改善、並びに被申請人会社の生産性の向上を図る目的で労働組合を結成した。

ハ 前記の労働組合には各申請人、高山正義、加科義人、臼田義郎、二木政雄、福田勲、羽田房江、三沢ちづ江及び被申請人会社の従業員中村正明の合計八名が加入し、組合役員には

執行委員長  高山正義

副執行委員長 加科義人

書記長    臼田義郎

執行委員   二木政雄

〃      福田勳

会計監査   中村正明

〃      羽田房江

が選出された。

四 それを察知した会社は申請人副組合長加科義人に対し、昭和三十年十月十八日零時頃職務上の理由を名目に解雇を言い渡し、同日同時刻頃この不当な解雇を労働組合の力で阻止すべくかねて結成してあつた組合の結成を会社に通知したところ、被申請人は「俺にだまつて何で組合を作つた」「うちの会社では組合を作つてはならない」「会社の方針として組合は認めないのだ」「組合へ入つているものは速刻出て行け」と大声でどなり、其の場に居合せた従業員に「お前は組合員か」と一人一人聞いて歩き、再三に渡り「出て行け」とどなつた。その時申請人臼田義郎はたまりかねて、被申請人に対し「それはひどいではないか、明らかに不当労働行為ではないか」と抗議したところ被申請人中村源一は「不当であらうとなからうと俺は思つた通りやる」とこれに対し、申請人高山正義、加科義人、臼田義郎はこもごも不当な仕打に抗議したが被申請人中村源一は「とにかく組合員は家に置く事は出来ぬ全員出て行け」と申請人ら全員に重ねて解雇の意思表示をした。

五 昭和三十年十月十八日午後五時四十分頃申請人高山正義、加科義人、臼田義郎の組合三役が被申請人に対し「組合員解雇の通告を取り消す様に」と団体交渉の申し入れを行つたが被申請人は「新聞は明日かぎり廃刊し、俺は会社をやめる」とて話合に応ぜず翌十九日午前九時頃出社した申請人全員は仕事をしようとして行つた所被申請人中村源一は「君達はもうこゝの従業員ではない、入ると不法侵入で刑法上の問題になる」と各申請人らは就業の意思であるにも拘らず、就業を妨げられたので、組合三役は再び、団体交渉を申し入れたが被申請人は之に応じなかつた。

六 其の後申請人等は松本労政事務所に解決方を依頼し、再三交渉してもらつた所、二十四日に到り十月二十三日重役会を開きその結論として被申請人は労政事務所に

「加科義人には解雇するとは言はなかつたが、申請人等七名は昭和三十年十月十八日午後一時頃から午後五時頃迄職場放棄による自主的退職と見なす」と連絡があつた。

七 右の経過により明白な如く被申請人が各申請人に対してなした解雇の意思表示はまさに不当労働行為であり無効である。

申請人側は解雇無効の本訴を提起すべく準備中であるが、元々非力なる今日不法に解雇され生活費を奪われた申請人側は明日からの生活に困り、又将来勝訴の判決を受けるその時迄の生活の継続すら憂慮される急迫したる事態に置かれましたのでこゝに申請に及ぶ次第であります。

疏明方法(省略)

昭和三十年十月二十九日

申請人 高山正義 外六名

長野地方裁判所松本支部 御中

(別紙省略)

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